IGNISI
イニシ


















イタリアのワイン文化には、土地や気候、時間が育んだ多様な個性が息づいている。本計画は、その豊
かな背景と向き合うための「静かな洞窟」を空間の原型とした。
客席の中心に据えたのはテーブルではなくカウンターである。食事を単なる行為としてではなく、五感
をひらいて向き合う「体験」へと転換する装置として位置づけた。
ワインと料理、人と人とが自然に交わる場として、このカウンターを空間の核としている。
組み込まれたワインクーラーは、この場所の主題を静かに象徴する存在となっている。
また、立食パーティーなど多様な利用形態にも対応可能な計画としており、カウンターに料理を展開することで、空間全体を一体的な場として機能させる。
天井はあえて一様な高さとせず、部分的に垂れ下げることで陰影と奥行きを生み出した。
開放的なワンルームでありながら、視線やスケールの変化によって緩やかな領域が形成され、親密な居場所が点在する。
壁や天井の粗い質感は、自然の洞窟を思わせる包容感を生み出し、訪れる人の意識をワインと料理へと向かわせる。
カウンターやテーブルにはワイン樽にも用いられるオーク材を採用し、鉄媒染によって深みのある表情を与えた。
光と陰影、素材の質感、そして人々の振る舞いによって構成された空間は、ワインの背後にある土地や文化を静かに想起させる。
一杯のワインと向き合う時間そのものを、より豊かな体験へと導くレストランである。
所在地:大阪市福島区
用途:イタリアンワインレストラン内装デザイン
構造:テナントビル内 内装リノベーション
竣工:2026年
ディレクション: 西川純司
設計:小田真平建築設計事務所 小田真平
照明計画:大光電機 村西貴洋
施工:ボッチ 吉田翼 藤田満也 岡本健太郎
家具:ロカプロダクツ 伊藤真一朗
写真:河田弘樹
塗装風景写真:城周作